では,ミオシン分子の数を見積もってみましょう.
まず,用意するのは,ちょびっと切り取った筋繊維.
長さ,1cm,直径60ミクロンですから,髪の毛ぐらいでしょうか...
さて,一本のミオシンフィラメントが断面で占める面積を計算しましょう.
ちょうどこの色がついているところが中央のミオシンフィラメントがしめる面積ですね.
ここを拡大してみると,
まずは,ミオシンフィラメントの六角形がしめる面積のうち,薄緑の面積を考えましょう.
これは簡単ですね,正三角形ですからすべての辺の長さが等しい.
正三角形を真ん中で二つに分離して,それぞれの三角形の辺の比は,
1:2:√3
となります.
一辺の長さは,40nmなので,正三角形の面積は,
20nm×(20×√3)nm÷2×2=400√3nm2
となります.
さて,前のピンクのエリアに話を戻して,ピンクのエリアと薄緑のエリアとの関係を考えてみましょう.
ピンクのエリアのうち,赤い部分はちょうど先ほどの薄緑の面積の1/3であることがわかります.
ピンクのエリアにはこれが6つあるので,
400√3nm2×1/3×6=800√3nm2
となります.
つまり,一本のミオシンフィラメントが断面で占める面積は,
800√3nm2
となります.
先ほど,用意した筋繊維の直径は,60ミクロンなので,
面積=π×半径の二乗
ミオシンフィラメントの本数=面積÷ミオシンフィラメントの占める面積
=3.14×(3×104nm)2 ÷ 800√3
=2×106本
となります.
結構な数ですね.
さて,では一本のミオシンフィラメントにはいくつのミオシン分子があるのでしょう?
ミオシンフィラメントの構造を見てみましょう.
これまたきれいな構造です.
双極構造を取っていて,ちょうど中央の0.2ミクロンのところがミオシンの頭部が見られません.
ミオシン分子は14.3nm周期が3つ並んでいるものと考えてください.
ですので,一本のミオシンフィラメントには,ミオシン分子が,
(1.6ミクロン-0.2ミクロン)÷14.3nm×3=300分子
あるわけです.
また,サルコメアの長さを2.5ミクロンとすると,1cmの筋繊維には,
1cm÷2.5ミクロン=4×103列
のサルコメアが含まれます.
つまり,ミオシン分子の数は,
2×106本×300分子×4×103列=2.4×1012個 =2兆個
もの,分子が含まれているのです.
では次に,ミオシン分子の発生する張力を見積もってみましょう.